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制服 × ESDのトビラ

卒業生の制服寄贈から新たな制服をつくる「循環型制服の取り組み」駒場学園高等学校

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今回は自律学習に力を入れている駒場学園高等学校です。卒業生から譲り受けた制服を原料の状態まで戻して作った糸から、新たな制服に再生させる「循環型制服プロジェクト」が実現。卒業生から新入生に、母校への想いもつなげてほしいという「想いの循環」も叶えた日本初の取り組みをリポートします。

日本初!捨てない『循環型制服』とは…

ニッケが取り組む「循環型制服」は、卒業生が着なくなった学生服を回収し、新たな制服として生まれ変わらせる日本初の試みです。ウール混の学生服を解体・反毛して繊維の状態まで戻し、その繊維から新たな生地を製織。こうしてできた循環型素材を使って全く新しい制服として生まれ変わります。この取り組みに生徒たちが主体となって関わることで、衣類の大量生産、消費に伴う環境負担の問題解決に自分たちも貢献できることを実感してもらいたい。そして、あらゆる環境問題を自分ごととして考えるきっかけにしてほしいというのが大きな狙いです。生まれ変わった制服を新入生たちが着用するだけでなく、環境への意識もつないでいく。そんな「想い」のリレーまで含めた循環が『循環型制服プロジェクト』の未来予想図です。

Teacher’s Voice1. 生徒たちの想いも巡る、循環型制服

戸塚副校長本校の自律学習という考え方は20年ほど前から始まっており、いかにして生徒自身に発想させるかという試みの一環として立ち上げたのが放課後探究プログラムの一つ「制服向上委員会」でした。最初は75周年記念のネクタイを生徒主体で作るところからスタートしました。その後、SDGs学習の中で制服を通して卒業生の想いを新入生につなげられないかと考え、本校の制服を作っていただいているメーカーにニッケさんを紹介していただきました。折しもニッケさんで循環型制服のスキームが完成して実証実験先を探していたタイミングだったとのことで、全面的にご協力いただけることになりました。

Teacher’s Voice2. 気づきこそ、行動への第一歩!

戸塚副校長:卒業した後も自分の制服が誰かの役に立つかもしれないという考えを持つことは、これからの循環型社会には大切であり、生徒にとって一番身近な衣服である制服を通してSGDsを考える大変良いきっかけと言えます。もちろん制服を手元に残しておきたいという気持ちもわかります。ですから、自分の制服から作られた制服を着た新入生が駒場に通っている、というもう一つの思い出の残し方もあるよね、と生徒たちには伝えています。今の生徒たちはSDGsについて学ぶ機会が増えているので知識はあります。けれど机上の知識だけでアクションにつなげるのは難しい。大事なのは身近なところで「気づき」を与え興味を持たせること。それが探究です。学校生活の中で「環境」に興味を持つきっかけをいかに作るか。それを考えるのが私たち教員の課題だと思います。

Teacher’s Voice3. 自由な学びの時代に制服を着る良さ

戸塚副校長:コロナ前後で学校に対する考え方は大きく変化しました。2023年3月の卒業生は入学時よりさまざまな制約を受けた経験から、取り戻した学校生活に人一倍幸せを感じている学年でした。一方でオンライン授業など多様な学びが選べる時代になったのも生徒たちにとって幸せなことでしょう。循環型制服はそんな新しい時代に、あらためて学校の良さを実感できるツールになりえると思います。自分たちの制服に込められた想いを知り、SDGsへの気づきを後輩に伝えたいという意識を育み、卒業しても訪ねたくなる母校にしていく。それが循環型制服を実現したかった一番の理由です。

Teacher’s Voice4. 啓蒙活動も生徒主体、が大事

戸塚副校長:第二回の寄贈式に向けて、在校生へのさまざまな啓蒙活動を行っていく予定です。その時大切なのは、生徒たちが自分で考えて活動すること。「未来につなげるために制服を大事に着よう」ということを生徒主体で発信していけるよう、我々教員はサポートしていきたいですね。

Teacher’s Voice5. 循環社会に貢献する取り組みの広告塔に

戸塚副校長:「循環型制服にチャレンジする」という私たちの思いつきも、ニッケさんの技術力なしでは実現しませんでした。現在はまだ本校のみですが、将来は日本全国の学校から集まった制服が新しい繊維となり各学校の制服の原料となることで、資源の有効活用に貢献する大きな流れができてくれたらすばらしいと思います。

Student’s Voice1. 制服向上委員会に入った理由

生徒Aさん:中学生の時からファッションデザイナーに興味があったので「制服づくりに参加できるなんて面白そう!」と思いました。

生徒Bさん:駒場にはいろいろな探究プロジェクトがありますが、自分たちで制服を作るなんて、なかなかできない経験だと思ったんです。

生徒Cさん:私は中学生の時も探究学習をしていて楽しかったので、高校でも何か挑戦したいと思い参加しました。

生徒Dさん:学校説明会の時に制服ができるまでの仕組みを解説してくれて、すごいなぁと感動して「参加したい!」と思いました。

Student’s Voice2. 主な活動内容を教えて!

生徒Aさん:まず決めたのは制服のチェック柄や色。色はただ好きな色を選ぶのではなく、そこに意味を込めなければいけないので、具体的な言葉から連想できる色を考え、配色してみて、みんなで相談しながら考えました。最終的に、現代と伝統、楽しさと謙虚さの対比を色に込めました。一方で衣服の大量生産・大量消費・環境汚染といったアパレル業界にまつわる問題も知り、何とかしたいと思うようになりました。

生徒Bさん:制服一着ができるのにどれ位ゴミが出るかなど、環境について学ぶのも活動の一つです。

生徒Cさん:制服を作る時に出る端切れをSDGsと結びつけて活かす「端切れ育成プロジェクト」という活動もしました。どんなものがあったら嬉しいかをデイサービスのスタッフさんに直接聞きに行き、ティッシュカバーとクッションカバーを作成しました。慣れないミシンでたくさん作ったので大変でしたが、渡した時に泣いて喜んでくれる方もいて嬉しかったです。

生徒Dさん:制服寄贈式の企画と実施にも携わりました。企画の段階からニッケさんがサポートに入ってくださったのですが、一つのイベントを行うのに自分たちで決めなければいけないことが想像していた何倍もあることを知り、貴重な社会勉強になりました。

Student’s Voice3. 循環型制服の輪をもっと広げたい!

生徒Aさん:在校生のほとんどが、今回の寄贈式で循環型制服のことを詳しく知ったと思うので、これを機会に自分たちも寄贈したいと思ってくれたら嬉しいですね。

生徒Dさん:なので、私たちのそういう気持ちを込めて、今回の制服寄贈式は「想いを受け継ぐ」というテーマにしました。

生徒Bさん:寄贈された制服が新しい制服になるまでには、たくさんの人の手が加わります。その仕組みを新入生や在校生に伝えて「大切に着よう」という想いをつなげたいです。循環型制服の取り組みの価値は、このサイクルがこの先も続いてゴミ問題に貢献できるという点だと思います。

生徒Cさん:次の代の制服向上委員会には全校生徒はもちろん、地域の新聞などで循環型制服を紹介して、他の学校にも循環型制服の輪を広げてほしいです。

POINT

「学ぶ」より「気づく」を大切に

「学習」と言ってしまうと、生徒は自然と受け身になりがち。「生徒にとって身近なことをきっかけに気づいてほしい。気づかないと興味を持てない」と戸塚副校長もおっしゃっていました。興味こそ行動を起こす原動力!

取り組みの価値を伝えていくのも生徒主体

取り組み自体はもちろんですが、先輩から後輩へ循環型制服の価値を伝えていくことで、制服だけでなく「想い」の循環が生まれます。ローマは一日にしてならず。来年再来年とこの流れを受け継いでいった先に、本当の意味でこの取り組みの成功があるのかもしれませんね。

「産学連携」でSDGsにつながる取り組みへ

今回「制服を使ってSDGsにつながる取り組みがしたい」という戸塚副校長のひらめきと、ニッケの目指す取り組みとが一致して日本初のプロジェクトが実現しました。企業の技術を活用すれば、学校でチャレンジできる環境教育の可能性が広がり、生徒たちにとってさらに興味深い体験が実現できます。

循環型制服をもっと詳しく知りたい方へ

駒場学園高等学校とニッケとの循環型制服の取り組みは、こちらの記事や動画でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください

今回取材させていただいた『駒場学園高等学校』

創立75周年。『自律学習』を核にした教育が特徴で、起業LABやメタバース空間を使った修学旅行の成果発表会など、未来を担う力を養うための多彩な探究学習を展開。「つくる責任、つかう責任」を合言葉に、再生可能エネルギー100%の電気供給や校内にゴミ箱を置かないなどSDGsにも積極的な、伝統と新しさが同居する高等学校です。

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