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制服 × ESDのトビラ

生活に密着した家庭科で身近な課題と紐づける。大森第六中学校 家庭科×ウールラボ

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第一回は、ESDの先進校でもある大田区立大森第六中学校。企業が提供する出前授業を多く取り入れ、学生たちがSDGsについて考えるきっかけを作っています。今回はその中でも、「衣服を通してSDGsを自分ごととして考える」をテーマに、繊維の特性や衣服がもたらす環境破壊について学べる、ニッケ提供の出前授業『ウールラボ』の導入例をリポートします。

Teacher’s Voice1. ESDの入門編にぴったりな教科コラボ

花村先生:本校はさまざまな教科で出前授業を多く取り入れています。私が担当している家庭科(特に衣生活)でも実現したいと思っていましたが、中学生の家庭科とSDGsをどう結びつけたら良いか悩んでいたんです。大田区には「自分の経験や知識を生かして子供たちの役に立ちたい」という人や企業と「こんなことがしたい、手伝って欲しい」という学校の橋渡しをしてくれる学校支援コーディネーターという教育支援があります。そちらのコーディネーターさんにご相談し、ニッケのウールラボを紹介していただきました。ウールラボの基本内容に本校がユネスコスクールで力を入れているSDGsの要素をよりわかりやすく追加して欲しいという要望にも応えていただき、本校用にアレンジしてくださいました。

Teacher’s Voice2.自分にできる取り組みをひとつ見つけたら成功!

花村先生:家庭科には衣食住を中心に様々な分野があり、生活に密着した教科です。だからこそ生徒たちには、難しく考えずに自分の生活の中でこれだけは続けられそうと思えるSDGs達成の取り組みを見つける機会にしてほしいです。例えば食品ロスを意識して生活しようとか、一着の服を大切に着ようとか、ちょっとしたことでいいんです。それが「自分ごととして考える」第一歩になれば大成功です。

Teacher’s Voice3.生徒の反応を見ながら授業をアップデート!

花村先生:今の生徒たちは、ファストファッション自体を知らない世代なので、「衣服の大量生産が環境負担になっている」と説明しても、最初はピンとこない様子でした。また中学生にとっては私服よりも毎日着ている制服のほうが身近なので、制服の中に着るセーターやYシャツを例にとって話をすると関心を示してくれました。あとは、生徒たちがウールラボで一番興味を持ったのは、実験や体験コーナー。特に羊の毛からウールの糸を作る経験は、生徒たちの関心が非常に高かったです。家庭科ではいかに身近なテーマでSDGsに関心をもってもらうかが重要。今後も生徒たちの反応が授業の良いヒントになると思います。

Teacher’s Voice4.教科をまたいだ取り組みでより深い学びを実現!

花村先生:今後は教科をまたいだ取り組みにもチャレンジしていきたいです。様々な教科で得た知識が互いに連動していることに気付かせたい、というのがその理由です。例えば裁縫の授業でボタンつけひとつを取ってみても、単なる裁縫技術の習得ではなく、衣服を補修して使うことで循環型社会の一助になるという気づきにつなげる。そんな風に子供たちが将来、知識を自らの取り組みに活かせるよう工夫していきたいです。

Teacher’s Voice5.今後ESDの視点で制服に期待すること

花村先生:大森第六中では2021年度からYシャツの他にポロシャツが着られるようになり、2022年度から夏服冬服の移行期間もなくなりました。これを機に生徒一人ひとりが、繊維の機能を上手に取り入れた衣替えを身につけてくれたらいいですね。給食×食品ロス削減のように、制服とESDをつなぐ良いアイデアがあれば、授業に取り入れていきたいです。

Student’s Voice1.ウールラボで印象に残ったこと

生徒Aさん:実際に生地を見て触って、なんの繊維かを当てるクイズが面白かったです。少し前に家庭科の授業でウォームビズやクールビズについて教わったばかりだったので、繊維の特性を知ったおかげで、機能的な服を選んでエアコンの使用量を減らせばCO2の発生を削減できるというSDGsと結びついて、自分にもできる取り組みだと感じました。

生徒Bさん:実際に羊の毛を撚って糸を作る体験が楽しくて、家でも話題にしました。今まで当たり前に着ていた制服やセーターが自然の生き物から分けてもらった素材から作られていたことを知って、改めて大切に使いたいと思いました。

Student’s Voice2.繊維を学んで気付いたこと、変わったこと

生徒Cさん:今までは気分でその日着る服を選んでいたけれど、ウールラボを受けてからは服のタグを見て「この服はこの繊維でできているんだ」とか「そういえばこういう特性があったな」と思い出して、運動する場合や気温などで服選びをするようになりました。

生徒Bさん:以前、学校で企業が企画した服を再利用するプロジェクトに参加したのですが、ウールラボで繊維の特性を知ってみて、繊維の特性によって再利用のしやすさも変わってくるのでは?という気づきがありました。これからはそういう視点も持って活動していきたいと改めて思いました。

Student’s Voice3.こんなウールラボならまた参加したい!

生徒Aさん:ウールラボでやった実験はとても印象に残っているので、自分で体験して確かめられる授業をもっと受けてみたいです。

生徒Bさん:羊の毛刈りとか。

生徒Cさん:工場見学とかも行ってみたい!

POINT

先生同士の密なコミュニケーション

ESDの取り組みは始まったばかり。先生にとっても新しいチャレンジです。ひとりで悶々と悩むより、先生同士の意見交換がヒントになることも。ちなみに大森第六中では定期的な研修会や分科会を開いて、テーマにあった授業をするにはどうするか、学生に考えてもらうためにはどういった授業をするべきかを話し合っているそうです。

企業の出前授業を上手に活用

今、多くの企業が子供たちへの教育支援の取り組みとしてSDGsをテーマにした出前授業を提供しています。まずは子供たちが興味を持つことが大事。ワクワクできる出前授業がその入り口として力になります。

体験型授業で子供たちに気づきを

今回の出前授業でも、羊の毛から糸を作る工程や繊維の撥水性・燃えやすさの実験など、体験型の学びに興味を持ったという声をたくさん聞くことができました。制服という身近な衣服に使われている繊維の特性を受動的な知識としてではなく、発見や驚きから知ることで「それならばこんな取り組みができる」という気づきに繋げることができます。

今回取材させていただいた『大田区立大森第六中学校』

昭和22年開校。勝海舟の別邸跡地に建つ歴史と伝統ある中学校です。洗足池のホタル復活プロジェクトをはじめとする多様な活動、各教科でSDGs達成を目指すESDを盛り込んだカリキュラムの実施等、持続可能な社会の担い手を育む教育(ESD)をいち早く導入。平成23年ユネスコスクールに加盟、ESD大賞文部科学大臣賞受賞等、ESDの発展に広く貢献しています。

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