CASE STUDY事例紹介

東京都世田谷区
学校法人駒場学園 駒場学園高等学校

卒業生の制服から
新たな制服をつくり資源を循環させる
日本初「循環型制服」

駒場学園高等学校は、2022年に創立75周年を迎えた東京都内の私立高校です。SDGs教育に注力する同校と、ウールを取り扱うメーカーの使命として、学校制服の持続可能性を追求するニッケとのコラボレーションで実現した「循環型制服」プロジェクトをご紹介します。

「循環型制服」とは?

ニッケが取り組む「循環型制服」は、卒業生が着なくなった制服を回収し、新たな制服として生まれ変わらせる日本初の試みです。ウール混の制服を解体・反毛して繊維の状態まで戻し、その繊維から新たな糸を紡ぎ、生地に織り上げていきます。こうしてできた循環型素材を使って全く新しい制服に生まれ変わります。この取り組みに生徒たちが主体となって関わることで、衣類の大量生産、消費に伴う環境負荷の問題解決に自分たちも貢献できることを実感してもらいたい。そして、あらゆる環境問題を自分ごととして考えるきっかけにしてほしいというのが大きな狙いです。生まれ変わった制服を新入生たちが着用するだけでなく、環境への意識もつないでいく。そんな「想い」のリレーまで含めた循環が『循環型制服プロジェクト』のゴールです。

机上の学びだけでなく、
環境への関心をもつきっかけに

駒場学園高等学校は、2022年に創立75周年を迎えた伝統校です。『自律学習』を核にした教育が特徴で、起業LABやメタバース空間を使った修学旅行の成果発表会など、未来を担う力を養うための多彩な探究学習を展開しています。「つくる責任、つかう責任」を合言葉に、再生可能エネルギー100%の電気供給や校内にゴミ箱を置かないという取り組みなど、SDGsにも積極的に取り組んでいます。
「本校の自律学習という考え方は20年ほど前から始まっており、いかにして生徒自身に発想させるかという試みの一環として「制服向上委員会」を立ち上げました。最初は75周年記念のネクタイを生徒主体で作るところからスタートしました。その後、SDGs学習の中で制服を通して卒業生の想いを新入生につなげられないかと考え、本校の制服を作っていただいているメーカーにニッケさんを紹介していただいたのが始まりです」と戸塚副校長。
「今の生徒たちはSDGsについて学ぶ機会が増えているので知識はある。けれど机上の知識だけでアクションにつなげるのは難しい」と戸塚副校長が感じられている課題の解決にもつながる循環型制服を、同校にどのように取り入れていくか。「制服向上委員会」の生徒とともに、企画をスタート。半年以上にわたり打ち合わせを重ね、卒業生からの制服回収を2023年3月から開始することとなりました。

駒場学園高等学校 副校長 戸塚 哲夫 さん

戸塚 哲夫 さん
駒場学園高等学校 副校長

先輩から後輩に手渡す
「制服寄贈式」で、制服の“循環”を体感

2023年5月に、学校に制服を寄贈してくれた卒業生と保護者、制服を受け継ぐ在校生が参加し、「制服寄贈式」が挙行されました。卒業生から寄贈してもらった制服は繊維に戻され、2024年の新入生が着用する「循環型制服第1号」として生まれ変わります。
「コロナ前後で学校に対する考え方は大きく変化しました。オンライン授業など多様な学びが選べる時代になったのも生徒たちにとって幸せなことでしょう。循環型制服はそんな新しい時代に、あらためて学校の良さを実感できるツールになりえると思います。自分たちの制服に込められた想いを知り、SDGsへの気づきを後輩に伝えたいという意識を育み、卒業しても訪ねたくなる母校にしていく。それが循環型制服を実現したかった一番の理由です」と戸塚副校長は語ります。
卒業生が3年間大切に着用した制服を手に取ることを通して、在校生が受け取ったのは、制服というモノだけではないはずです。まさに戸塚副校長が目指される学校・生徒の姿の実現につながる瞬間に立ち会えたことに、私たちニッケ社員も喜びを感じました。

制服寄贈式を企画・運営した生徒たちには、循環型制服プロジェクトを「着る」ことと社会のつながりを学ぶきっかけとしていただけたようです。

【生徒の声】

  • ・活動の中で、衣服の大量生産・大量消費・環境汚染といったアパレル業界にまつわる問題も知り、何とかしたいと思うようになりました
  • ・企画の段階からニッケさんがサポートに入ってくださったのですが、一つのイベントを行うのに自分たちで決めなければいけないことが想像していた何倍もあることを知り、貴重な社会勉強になりました
  • ・寄贈された制服が新しい制服になるまでには、たくさんの人の手が加わります。その仕組みを新入生や在校生に伝えて「大切に着よう」という想いをつなげたいです。循環型制服の取り組みの価値は、このサイクルがこの先も続いてゴミ問題に貢献できるという点だと思います
制服向上委員会の生徒の皆さん

制服向上委員会の生徒の皆さん

制服をきっかけに、
子どもたちの意識も、未来も変わる

同校の循環型制服プロジェクト第2弾に向けて、活動は続いています。戸塚副校長は「大切なのは、生徒たちが自分で考えて活動すること。『未来につなげるために制服を大事に着よう』ということを生徒主体で発信していけるよう、我々教員はサポートしていきたいですね」と今後への想いを語られました。
企業の技術を活用すれば、学校でチャレンジできる環境教育の可能性が広がり、生徒たちにとってさらに興味深い体験が実現できる。駒場学園高等学校とのプロジェクトを通して確信しました。

CASE STUDY

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